アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法 (THEORY/IN/PRACTICE)

アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法 (THEORY/IN/PRACTICE)

エンジニアの思考やプロジェクトマネジメントを少しでも理解したいと思い、エンジニア知人に借りて読みました。この本の素晴らしいところは、カジュアルで日常の例を挙げながら「これってこういうことだよ」「こんな時はこうするといいよ」と相談者に寄り添うかたちで内容を掘り下げ本質を見せてくれるところだと思う。著者はマイクロソフト社で長年ソフトウエア/ウェブ開発のエンジニアリングマネジメントをしてきた人で、どれほど正直な人かは「はじめに」を読めばわかる。その実直さに読み始め早々吹きました。

私が書籍を選ぶ際には、まえがきに書かれていることをあまり信じません。あなたも信じない方がいいと思います。まえがきが、それ以外の部分と同じ文体で同じ論調となっていることなどほとんどありません。そう断言してしまうと身も蓋もないのですが、……(略)
〜本書の対象読者〜

本書は、章を読み飛ばしてつまみ食いする人々のことも考慮しています。しかし、初めから順に読み進めていくという読み方にもメリットがあるのです……(略)
このまえがきすべてに目を通したあなたは、優秀かつ忍耐強い人と言ってよいでしょう。本書を読む上で必要なこと(ページ番号と脚注といったもの)を知っているのであれば、すぐに読み進めていただいて結構です。  〜本書の使い方〜

わたしは優秀かつ忍耐強い人だったんだね!気を良くしてすぐに読み進めた。一気読みした。長くなるので内容は省略しますが、特に興味深く読んだのは下記の章です。

  • 8章:優れた意思決定の行い方
  • 9章:コミュニケーションと人間関係
  • 10章:メンバーの邪魔をしない方法 プロセス、電子メール、打ち合わせ
  • 11章:問題発生時に行うこと
  • 12章:リーダーシップが信頼に基づく理由
  • 13章:ものごとを成し遂げる方法

とりわけ12章の「信頼の構築と破壊」はリアリティがあり、日常生活全てに頷ける内容でした。

  • 12.1.1 信頼は表明によって培われる
  • 12.1.2 矛盾した振る舞いによって信頼が失われる

ここでは、いくら頭の回転が速くて面白い人であっても信頼できないという事実の前ではそんなことは関係なくなり、じょじょに周りの人々はヘトヘトになってしまう。目的や行動に集中できず、その人が本当に表明通りに行動するかどうかに気を取られてしまい、挙げ句破綻を来してしまう……という現実が実例説明されています。プライベートでも同じことがいえる。自分の振る舞いにおいて引き締まる思いがしました。

私のようなド文系の人間でもとても読みやすく参考になったし、実践や具体策が豊富で巷に溢れる啓蒙本よりよほど濃い内容だと思いました。技術者向けの本は信頼と安心感があるので好きです。著者が「つまみ食い読みどうぞー」と言ってくれている珍しい本で、非エンジニアにも優しい言葉でプロ技術者の視点を見せてくれる良本だと思いました。
これから読んだ本は少しずつmediamarker-tomomiiにあげますね。ご興味のある方はよろしければチェックしてみてください。

ヒルベルトの挑戦―世紀を超えた23の問題

ヒルベルトの挑戦―世紀を超えた23の問題

この本も一緒におススメしてもらったんだけどこちらは読破厳しそう