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読了
- 作者: 重松清
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/10/15
- メディア: 文庫
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美しく哀しいお話だった。この本と出会えてよかったな。
死ぬことができない(千年の命を持つ)カイムが、世界を旅し人と触れながら夢をみる。夢ひとつが1章構成で展開している。夢は死の淵の記憶かもしれない。彼は悠久の生の中で出会う人(家族、子供…)の死を通り過ぎるしかなくその始終を見送る。章によりカイムの人格が少しずつ違って感じて その様は千年の年月を感じさせるに十分だった。終盤 ハンナの死前では彼が生きてきた美しい旅の物語だけを語る。自分自身のために。美しい記憶が人を生かしてくれる。最終章の描写は秀逸だった。
自分は不慮の事故で身近な人の死を経験した。そのしばらく記憶がないのだけれど、死が自分のすぐ横にあることと残された人の人生を変えてしまうことを知った。それでも今もし例えば親が死んだ時 自分がどうなるか想像できない。読み終えた本をパタンと閉じるような当たり前さはない。カイムのように見送り続けるのは悲しいし近い人にも死が存在しているのは幸せなことだとすとんと落ちた。長短はあれどみなに等しく訪れる。よかった。人がうまれて死ぬという一連がすごくよく出来た必然だと思えた。